「第三者の立場から、その人にあった適切な住宅購入をアドバイスしたい」
そう志し、住宅会社を退職したのが2015年の夏のことでした。
「ファイナンシャルプランナー(FP)として飯を食っていくのは難しい」という諸先輩方のアドバイスを完全に無視し、自分が正しいと思う道を信じて進んできた結果、多くの方々に支えられ、気づけばもうすぐ10年が経とうとしています。
当時はFPという存在自体がほとんど認知されておらず、「FP=保険を売る人」というイメージだけが先行している時代でした。(今もその傾向はありますが…)
家を買う前にFPに相談する人も、ごくわずかだったと記憶しています。
そんな中でも「マイホームを買う前にお金のことをきちんと考えたい」「営業マンではなく、第三者の視点を持った人に相談したい」という方々と出会えたことで、今の私があります。
本当にありがとうございます。
この10年間で、500件以上のご家族の住宅購入に携わってきました。
最初は「私たちの経済状況でマイホームを購入しても大丈夫なのだろうか」と不安そうだったご夫婦が、私との面談を通して適切な予算を把握し、安心してマイホーム購入計画に向き合えるようになっていく。
そんなご家族の姿を見るたびに、この仕事の楽しさや、自分の存在価値を感じることができ、「私にとって最高の仕事」だと心から思えています。
マイホーム購入は
特別なイベント
マイホームを購入する。注文住宅を建てる。
それは、ご家族にとって人生の中でも特別なイベントです。
新しい暮らしに夢を膨らませ、理想の間取りやインテリアを選び、住んだあとの幸せな日常を想像する時間は、日常生活では味わうことのない楽しさが詰まっています。
注文住宅でいえば、なかなか見つからない土地を探し、何件ものモデルハウスを回り、毎週のようにショールームや工務店に通って打合せを重ねていく。
半年以上にわたり、家族の時間とエネルギーをマイホームに費やす日々。
ときには夫婦間で意見がぶつかることもありますが、それも含めてかけがえのない時間だと私は思います。
完成間際になると「もう家が完成してしまうのが寂しいんですよね」と口にする方も少なくありません。
マイホームづくりの時間が、それだけ特別で充実したものであった証だと思います。
私自身も、住宅建築が大好きです。
YouTubeやInstagramのお気に入りはほとんどが住宅系(ときどき犬系)。
時間を見つけては、興味のある住宅会社のモデルハウスやショールームの見学に出かけることもしばしばです。
思い返せば小学生のころ、分譲マンションのチラシに載っている間取り図を見ながら、自分の理想の家の間取りを描いてよく遊んでいました。
今この仕事をしているのも、自然な流れだったのかもしれません。
時代は大きく変化した
私が独立開業した当時、家づくりに関する情報源といえば、ネット記事やブログ、雑誌が主な情報源で、かなり限られていました。
「ハウスメーカーと工務店、どっちがいいのか?」
「どのローンを選べば安心なのか?」
そんな基本的な疑問ですら、調べるだけでもひと苦労…という時代だったのです。
それが今では、YouTubeやInstagramを見れば、専門家はもちろん、実際に家を建てた方々がリアルな体験や、完成した自宅をルームツアーとして情報開示してくれています。
使っている床材のメーカー名や品番まで解説されていて、家づくりのノウハウはかつてないほどオープンになりました。
この情報の開放により、住宅会社全体のレベルも大きく向上しました。
10年前には「おしゃれにしたいけど、ノウハウがないからできない」という工務店も数多く存在していました。
デザインも性能も中途半端で、しかも価格が安いわけでもない・・・そうした「ハズレ住宅会社」も当時は珍しくなかったのです。
しかし今では、そうした住宅会社も進化し「大ハズレ」がなくなりつつあります。
また近年では、「自分たちに合ったハウスメーカーを紹介してもらえる無料の住宅相談窓口」も広く認知されるようになってきました。
無料相談窓口の是非については置いといて、こうしたサービスを利用するご家庭も増えています。
このような背景からも、誰もが一定の品質・デザイン・性能を備えた家づくりができる時代になっていきました。
これは家を建てる人にとって、本当に良い変化だと思います。
華やかさの裏に、
不安を感じている
家づくりに関する情報が豊富になり、SNSやYouTube、住宅系インフルエンサーなどの登場によって「理想の住まい像」は年々洗練され、より高い水準のものになってきました。
間取のアイディア、照明や素材の組み合わせ、インテリアの配置、動線設計…。
実際に暮らしている方のリアルな投稿は、見るだけでも楽しく、憧れをかき立てられますよね。
「こんな家に住みたい」「この間取りを真似したい」と思えるような情報を簡単に得ることができる今、私たちが思い描く『理想の暮らし』はより明確になり、それに近づける手段も確実に増えていると感じます。
10年前のように「何が正解か分からないまま、なんとなく提案された仕様で建てた家」と比べれば、格段に満足度は高くなったことでしょう。
ただ・・・
この華やかさの一方で、私はどうしても「家を建てたあとの暮らし」について考えてしまいます。
というのも、ここ数年の物価上昇や住宅価格の高騰、金利の先行き不透明感といった現実的な要素が、家計にじわじわと重くのしかかり始めているからです。
- 建築資材や人件費の高騰で住宅価格は1.3倍~1.5倍も増加
- 平均3,500万円だった住宅価格が4,500万円~5,000万円に
- 食料品や日用品、電気代やガソリンなど、日々の暮らしに関わるもの全てが値上がり
- 住宅ローンを取り巻く環境も大きく変化し、先行きが不透明
- 超低金利時代が終わりを迎え、金利上昇のリスクが現実的に
- 住宅ローンは40年返済が当たり前に普及している
- 定年退職後まで住宅ローンが続くケースが一般的に…
このような時代でも、家を建て終えたあと20年、30年、40年と続く暮らしの中で、本当に無理なくローンを返済し続け、家族の笑顔を守れるのでしょうか。
マイホームは『完成した瞬間』『購入した瞬間』がゴールではありません。
引渡しを受けたその日から、新しい生活がスタートします。
子どもたちの成長や進学、車の買い替え、旅行や趣味、老後の生活・・・これらすべてに「お金」が関わってくるのです。
私自身、SNSで素敵な家を見るたびに心が躍りますし、マイホームを建てて大満足しているご家族を見ると「幸せそうだなぁ」と微笑ましくなります。
それと同時に「このご家族は、住宅ローンを支払うだけの人生になってしまうのではないか」と一抹の不安を感じます。
時には「ローンが返せなくなり、いずれ厳しい選択を迫られることになるかもしれない」と心が痛くなることもあるのです。
「借りられる」と「返せる」は全く別物
マイホーム購入を検討されるご家庭の多くが、最初に気にされるのは「私たちはいくらまで住宅ローンを借りられるのか」という点です。
金融機関の住宅ローン審査においては、年収や勤務先、勤続年数、既存の借入状況などをもとに「いくらまで貸せるか」が判断されます。
その金額をもとに「私たちの予算はこれくらいかな」と家づくりをスタートされる方も少なくありません。
しかし、ここには大きな落とし穴があります。
住宅ローンの「借りられる金額」は、あくまでも金融機関の審査上、融資可能と判断された金額であり、決してその金額がそのまま「安心して返していける金額」だとは限りません。
「銀行がお金を貸すということは、銀行が『しっかり返済していける人と判断した』ということなので大丈夫」という意見を目にしたことがありますが、これは完全に間違っています。
なぜなら、銀行は万が一、ローンの返済ができなくなった場合は『担保にしている土地や建物を差し押さえる』という前提で融資を行っているからです。
つまり『返せるかどうか?』ではなく「ローンを返せなくなった場合でも、土地と建物を取り上げれば銀行として損はしない」ことを基準として『最終的に銀行が損をしない範囲まで貸す』という視点で審査をしているのです。
しかも土地建物(担保)を取られたからといって、それで借金がなくなるとは限りません。
例えば、3,000万円の住宅ローンが残っている状態で返済が困難になり、家を手放すことになったとします。
仮にその家が2,000万円でしか売れなかった場合、差額の1,000万円は家を失った後も支払いが続いていくのです。
銀行も慈善事業ではなく営利企業ですから、残念ながらこれは当然の仕組みです。
「銀行が貸してくれる=自分たちが無理なく返していける」という保証ではない。
このことに気づかないまま家づくりを進めてしまう怖さを、冷静に考えてみてください。
私たちには、住宅ローンの返済だけでなく、日々の暮らしがあります。
食費、光熱費、通信費、保険料、車の維持費や買い替え、家電の故障、子どもの教育費、レジャーや旅行、老後の備え——。
銀行は、こうした家族の将来にかかるお金までは考慮して審査しているわけではありません。
「借りられる金額=返していける金額」ではない。
その認識がないまま家づくりを進めることのリスクは、想像以上に大きいのです。
いくらなら幸せに暮らしていけるのか?
さらにもう一歩踏み込みます。
「返していける金額」と「返しながら、その後の人生も幸せに暮らしていける金額」もまた別物です。
- 住宅ローンを支払うことで精一杯
- 家族で国内旅行にも行けず思い出を作ることができない
- レジャーも外食も控えがちな節約生活
- 子どもの進学にかかる費用もギリギリ
- 趣味や交際費にかける余裕がない
- 家族との時間を犠牲にして働かないといけない
- 貯金もなかなかできず、将来への不安だけが募っていく
仮に「毎月なんとか返済はできている」としても、こうした暮らしは『幸せ』だと言えるでしょうか?
私が住宅購入の予算を一緒に考えるうえで大切にしているのは「いくらならマイホームを手に入れたあとも、幸せに暮らしていけるのか?」という視点です。
「何をしている時に楽しいと思うのか?」
「働くことに対し、どのように感じているか?」
「今後、家族でしたいことは?」
「どんな人生を生きていきたいのか?」
そうしたひとつひとつを丁寧にお伺いしながら、ご家庭ごとに『ちょうどいい予算』を一緒に見つけていくこと。
これがマイホーム購入やその後の人生を考える上で、とても重要なのです。
10年後、20年後も笑顔で暮らすために、あなたが本当に考えるべきなのは「いくらなら借りられるか」ではなく「いくらなら幸せに暮らしていけるか」ではないでしょうか?
ちなみに・・・
このようなお話をすると「この人に相談すると住宅購入予算を削られるのでは…」と心配される方もいらっしゃいます。
しかし、私の仕事は決して「とにかく予算を下げましょう」「節約しましょう」と助言することではありません。
私の目的は『そのご家族にとって無理のない、そして将来的にも豊かさを感じられる住宅購入』を一緒に見極めていくことです。
実際に「むしろ予算を上げて考えたほうが、長い目で見て得られる価値が大きいですよ」とアドバイスさせていただくことも多々あります。
予算を上げることがご家族にとってプラスになると判断すれば、私はその理由を丁寧に説明したうえで、前向きな決断を後押しさせていただいています。
本当に大切なのは、マイホーム購入(または買わないという選択をすること)を通じて、目の前のご家族がより良い人生を歩んでいけるかどうかの一点です。
そのために、私は日々ご相談をお受けしています。
得られる情報、
得られない情報
冒頭でも触れたように、家づくりの情報はもはやSNSやYouTubeなどで、いくらでも手に入る時代となりました。
私自身、開業当初と比べて「家づくりそのもの」について情報発信をする社会的意義は薄れてきたと感じています。
実際、多くの方がご自身で勉強され、ハウスメーカーと工務店の比較、間取りや設備の選定など、以前よりも格段に知識を持った状態で住宅会社と打合せされています。
これは、住宅業界全体にとっても素晴らしい変化だと思います。
しかし一方で、「まだまだ手に入りにくい情報」があることも認識しておく必要があります。
それは「あなたの場合はどうか?」という情報です。
たとえば、いくらまでなら住宅ローンを返していけるのか?という問題。
世の中では「年収の○倍までなら安心」「年収の30%以内に抑えれば問題ない」といった一般的な基準が語られていますが、これは完全に間違っています。
なぜなら、人によって年齢も家族構成も支出も違いますし「趣味や旅行をどれだけ大切にしたいか」といった価値観も大きく異なるからです。
また「変動金利がお得!」「ハウスメーカーより工務店の方がコスパがいい!」という声が多い中でも、「固定金利の安心感が欲しい」「保証体制が充実しているハウスメーカーの方が自分たちには合っている」と感じる方もいます。
このように、誰かの成功事例や理想的な住まいの紹介はたくさんあるものの、「自分たちにとってベストな選択は何なのか?」という問いに答えてくれる情報は意外と少ないのです。
あなたの味方は誰なのか?
そのような個別具体的な相談をしたいとき、あなたは誰に相談しますか?
ハウスメーカーの営業担当、銀行のローン担当者、あるいは無料の住宅相談所…。
さまざまな選択肢があるでしょう。
ここで注意してほしいのは「その人が『どの立場』でアドバイスをしているのか?」という視点です。
表向きには「お客様のため」「中立的なアドバイス」と謳っていても、現実には多くの関係者が「できるだけ高い住宅を契約してもらうことにメリットがある立場」にあります。
たとえば多くの無料住宅相談所では、契約が成立した際、契約金額の○%という形で紹介料を受け取るのが一般的です。
つまり、契約金額が高くなればなるほど、紹介料も増える仕組みになっているということです。
金融機関も融資金額が大きければ、その分、金利収入が増えます。
ハウスメーカーも建物金額が高くなるほど売上が上がり、営業成績や給料、会社の利益に直結します。
当然、すべてのサービスが一様ではありませんし、誠実に対応してくれる方々もたくさんいらっしゃいます。
頼りになるハウスメーカーの営業マンも、金融機関の担当者も存在するでしょう。
ただ現代の基本的な社会構造が、必ずしもあなたにとってベストな判断を導いてくれる仕組みになっていない。
これが実情なのです。
私の社会的な役割
時代が変化する中、今、私に求められているものは何なのか、ずっと考えていました。
「情報が溢れる中でも、解決できない『その家族特有の問題』を一緒に解決していくこと」
これが今の時代になっても、私に求められていることなのだと改めて思います。
- 適切な住宅購入予算を見極めることができる
- 住んだあとも安心して生活していけるライフプランを立てることができる
- 一人ひとりに寄り添い、個別具体的なアドバイスができる
- 人生設計に基づいた住宅ローンのアドバイスができる
- 予算感に合わせた住宅会社の選び方をアドバイスできる
- 日常生活に合わせた間取りを一緒に考えていくことができる
- マイホームだけでなく、その人にとっての『幸せ』を見極めた提案ができる
このような第三者の立場から、相談者さま一人ひとりに寄り添って、適切な住宅購入や人生設計をアドバイスできること。
これが10年間、住宅購入専門のファイナンシャルプランナーとして、数多くの相談を受けてきた私だけの強みだと思っています。
目の前にいるご家族にとって、ベストな選択肢を一緒に考える。
そしてマイホーム購入が終わったあとも『幸せな生活』ができるようなアドバイスをし、
「新松さんに相談してよかった」
と心から思ってもらえるような、そんな関係性を築いていくこと。
「お金」をはじめとする一人ひとりの人生に深く関わる問題は、まだまだ私にしか発信できない、私にしか解決できない問題なのだと感じています。
そしてそれが『私の社会的な役割』なのだと最近、改めて思うのです。
一人ひとりの人生に
向き合っていく
10年前、私は「住宅購入専門のFP」という札幌では前例のないこの仕事を始めました。
振り返るとこの仕事を始めた当初は、とにかく「家づくりに関する情報をどう伝えるか」に力を注いでいました。
当時は、まだ今のように情報があふれていなかったので、それを必要としてくれる方も多かったと思います。
しかし時代は大きく変わり、私の役割も変わってきたのだと思います。
「家をどう建てるか?」だけではなく
- 家を建てたあと、どんな生活をしていきたいのか?
- どんなお金の使い方をすると幸せになれるのか?
- どんな働き方をしたいと思っているのか?
- どんな人生にしていきたいのか?
- あなたにとっての『幸せ』とはなにか?
この問いを投げかけ、マイホーム購入をきっかけとして、人生のロードマップを一緒に考えていく。
それが私の役割だと感じています。
私は営業ではありませんし、何かを売る(売り込む)のは得意なタイプではありません。
どちらかといえば「家を買うかどうか迷っている人」や「マイホームを購入したいけど、正しい選択ができるか心配で不安に感じている人」に寄り添い、同じ方向を向いて一緒に考えるのが得意なタイプです。
マイホーム購入を通じて、人生がより豊かで幸せになるように、私にしかできないことを提供していきます。
情報を集めて、自分で学び、自分で判断していくことももちろん大切です。
ただ「これが正解で間違いないのだろうか」「これは専門家に任せるべき問題なのではないか」と感じる場面も、きっと出てくることでしょう。
そのときは、どうぞ遠慮なく声をかけてください。
家づくりや、これからの人生に不安を感じるのは、あなただけではありません。
一人では抱えきれないことも、私となら乗り越えられるかもしれません。
信頼に応えられるよう、全力で伴走させていただきます。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。