注文住宅、マンション、中古の一戸建・・・
マイホーム購入と言っても様々な選択肢があります。
私は元々、注文住宅の営業マンだったので、注文住宅を購入される人をメインに相談業務を受けています。
しかし、最近では『建売住宅』を検討されている方が増えています。
その理由は土地や建築費用が上昇し、札幌市内で注文住宅を建てると『4,500万円が最低ライン』となってしまっているからです。
「戸建てがいいが、注文住宅は高すぎるので、割安な建売住宅を検討しよう」という流れですね。
「建売住宅ってどう思いますか??」とご質問いただきますが、
- なぜ、家を購入しようと考えたのか?
- どういう家が欲しいのか?
- どういう人生を送っていきたいのか?
これらの理由次第で『建売住宅』がオススメになる場合もあれば、他の選択肢が良いと助言することもあります。
建売には建売のメリット・デメリットがありますし、注文住宅・中古戸建・マンションにもメリット・デメリットがあります。
自分にとってどちらのメリットの方がより魅力的で、どちらのデメリットは気にならないのか?
この比較をすることで、どちらが適しているのかを判断することができるでしょう。
今回は『建売住宅』についてのメリット、デメリットを解説していきます。まずはメリットから。
メリット① 時間・労力の削減
- 土地を探す時間、労力がかからない
- 間取りを考える必要がない
- キッチンなど設備を決める手間がかからない
- 既に完成しているので工期がかからない
- つまり、すぐ引越しができる
既に完成している、または完成間近であることが多い建売住宅は、住むまでの時間を大幅に削減することができます。
土地探しや打合せの、手間や労力もかかりません。
「家を買おう!」と決断してから、最短1か月後には入居可能です。
一方で注文住宅の場合、家を買う決断をしてから
- 土地探し
- 住宅会社選び
- 間取りを決める
- 床、壁、キッチンなどの設備決め
- 工事開始~完成引渡し
こういった工程を踏むことになるので、最低でも半年、場合によっては1年~2年以上かかる場合もあります。
この住宅会社を選んだり、間取りや設備を決めるためにショールーム見学に行く期間を楽しいと感じる人もいます。
しかし一方で、それに興味がない人、むしろ面倒に感じる人には「即入居できる建売住宅」は大きなメリットといえるでしょう。
メリット② 家賃の削減
注文住宅と建売住宅では、家を買おうと決断してから実際に引越ができるまでの時間に、大きな差があることは前述したとおりです。
仮に、建売住宅を選ぶとすぐ引越しができるが、注文住宅を建てるなら約1年は時間がかかるとしましょう。
この場合、注文住宅を選択すると、賃貸アパートの家賃が1年分も余計にかかることになります。
仮に現在の家賃が8万円なら、8万円×12ヶ月=96万円です。
建売住宅を選ぶことで入居が1年早まれば、現在支払っている賃貸アパートの家賃を1年分削減できることになり、これも経済的なメリットと言えます。
建売住宅は、「時間・労力・現在支払っている家賃」これらを大幅にカットできます。
メリット③ 注文住宅と比べて安い
注文住宅と比べて建売住宅は、価格が安いという特徴があります。
理由は様々ですが、注文住宅と比べ、圧倒的に『人件費がかからない』ことがひとつの要因になります。
大工さんや職人さんの人数は変わりませんが、建売住宅は建てやすい設計で、オリジナル家具の制作などもないため、短期間で工事が終わります。
そのため、注文住宅では2ヶ月かかる大工工事が、建売の場合は約1ヶ月で終わることもあり、人件費が浮くことになります。
また注文住宅の場合、間取りを考える設計士や、床やドア・設備の打合せをおこなうコーディネーターなどの人件費が余計にかかり、それが価格に反映されています。
しかし、建売住宅ならお客様との打合せはありませんので、そこにかかる人件費を削減することができ、割安で家を売ることができるのです。
メリット④ 使える銀行の幅が広い
意外と知られてない大きなメリットです。
たくさんの金融機関がありますが、買うマイホームの種類によって「使える銀行」と「使えない銀行」があることをご存知でしょうか。
注意が必要なのは、基本的に注文住宅のみです。
土地を持っていない人が注文住宅を建てる場合、土地を買うタイミング、家が完成したタイミングの最低2回、住宅ローンを借りる必要があります。
この場合、「分割融資」「つなぎ融資」という仕組みを活用しなければなりません。
しかし、銀行の中には「分割融資」や「つなぎ融資」に対応していない銀行もあるのです。
「注文住宅を建てたい」→「分割融資・つなぎ融資が必要」→「対応していない銀行は選べない」という流れです。
特に金利の低いネット銀行は『分割融資』『つなぎ融資』に対応していないことが多く、注文住宅を建てる際に利用できない可能性が高いのです。※土地を所有している、土地を現金で購入するなど、注文住宅でも利用できる場合もあります
それに対してマンション、中古物件、そして建売住宅については、銀行からお金を借りるタイミングが『完成している土地建物』の代金を払う1回だけになるので、基本的にどこの金融機関の住宅ローンでも使うことができます。
つまり建売住宅の場合、分割融資・つなぎ融資を使う必要がなく、金利の低いネット銀行が使えるのです。
前項までのメリットを見返しても、建売住宅は
- 販売価格が安い
- 時間短縮による家賃の軽減
- 選べる住宅ローンが多い
と、経済的なメリットが大きいことがわかります。
メリット⑤ 完成した実物を見て判断できる
注文住宅の場合、図面やCG、模型などを頼りに完成形をイメージして計画を進めていくのですが、
- 建物の大きさ、広さの感覚
- 床や扉、外壁などの色
- 実際の日当たり
こういったものは建築前と完成後で、誤差を感じてしまうものです。
「あれ?こんな暗い色の床にしたかな…」「思ったよりリビング広かったね…」みたいなことです。
一方で建売住宅は、実物を見て判断することができるというメリットがあります。
買った後にイメージとの相違による「こんなはずじゃなかった…」という状況は回避できますね。
メリットのまとめ
- 時間、労力の削減
- 家賃の削減
- 注文住宅と比べて安い
- 使える銀行の選択肢が広い
- 完成した物件を見て判断できる
以上5つ、建売住宅のメリットを紹介してきました。
建物価格が安いという以外にも、経済的なメリットが大きいことがわかりますね。
では続いて、デメリットの紹介になります。
デメリット① 間取り、仕様が決まっている
正直、ここに尽きます。
建てる前に買い手が決まっていない建売住宅の間取りは、100人いれば70人が不便なく使える間取りになっています。
部屋は子供部屋2つ、寝室、プラス客間があるかないかの3~4LDK。
トイレも1つの家が多いですし、お風呂も標準的な1坪タイプがほとんどでしょう。
これらを満たせば、おおよその人は問題なく生活していくことができます。
しかし、この間取りや設備、デザインでは満足ができず、もっと自分たちの生活スタイルに合わせたオリジナリティーを求めているなら、建売住宅はベストではないかもしれません。
例えば、
- 子ども部屋が3つ欲しい
- 書斎が欲しい
- パントリー(食品庫)が欲しい
- お風呂は大きめのタイプにしたい
- トイレは2つ欲しい
- 車庫が組み込まれている家にしたい
- 将来、車椅子が使える家にしたい
- 海外製のキッチンを導入したい
などです。
『あなたの生活に家を合わせる』のが注文住宅。
『あなたが家に合わせて生活をする』のが建売住宅。
注文と建売住宅との決定的な違いです。
ちなみに分譲マンションや賃貸住宅も、建売住宅と同じく間取りや設備、デザインが決まっています。
そう考えると、多くのマイホームは間取りが決まっているタイプだということになりますね。
デメリット② 施工品質のチェックが難しい
いわゆる『手抜き工事』をしていたとしても、確かめようがありません。
完成した物件の壁をはがして、ちゃんと柱があるかを調べる人はいません。
第三者機関の検査がある現代において、本来あるべき場所に柱がないなんてことはありませんが、
「基礎と木造部分を連結するアンカーボルトが足りない」→本来の耐震強度を保てているのか?
「断熱材が適当に詰められている」→本来の断熱性を発揮できていない
「壁の下地材が足りない」→数年後、壁がゆがむ原因になる
このようなことが、日常茶飯事で起きています。
私が信頼している工務店の事務所の横に、別の会社が建てた建売住宅があるのですが、その建売住宅が完成するまで工事の進捗を毎日見ていた工務店の社長が
「値段は確かに安いけど、施工はひどい。何も知らずにこの家を買ってしまうお客さんがかわいそう」
と言っていました。
完成したものを見ただけでは、しっかりした施工がされているかはプロでもわかりません。
見える部分はすでに外壁や床、壁紙で隠されています。
完成した物件を買う場合は、ある程度、容認する必要がありそうです。
デメリット③ アフターフォローをしっかりしてくれる会社なのか
前記のように施工品質のチェックが非常に難しく、かつ多くの手抜き工事が横行している建売住宅。
そのため、メンテナンス費用も注文住宅と比べてかかる傾向があります。
このメンテナンスをしっかりしてくれる業者なのかの見極めが、とても難しいです。
注文住宅を建てる際にはかなり長い期間、会社や担当者とお付き合いしますから自然と「社風」や「人間性」を見ることができます。
しかし、完成しているものを購入するだけの建売住宅の場合、人間関係が希薄になる傾向にあります。
建売住宅をメインにしている会社は『良い住まいをお客様に提供したい!』という想いで経営しているというより、「土地だけ売るよりも、そこに家を建てて売った方が利益が多く取れる」という考え方の会社が多いです。
そのため「今後10年、30年、50年のお付き合いをしていきましょう!」という社風ではなく、「どうやったらたくさん家が売れるか?できるだけ利益を出すにはどうしたらよいか?」を最優先に経営している傾向にあります。
もちろんビジネスですから、それ自体は悪いことではないと思います。
購入者様が、何を重視する、しない次第で選択肢は変わります。
購入前にしっかり整理するようにしましょう。
デメリットのまとめ
- 間取り、仕様が決まっている
- 施工品質のチェックが難しい
- しっかりアフターフォローをしてくれる会社なのかの見極めが難しい
主に経済的なメリットがあった反面、品質確保が注文住宅と比べて難しいというのはデメリットでしょう。
とはいえ間違いなく建築基準法をクリアし、役所からの建築許可が出ている建物ですから、過度な心配は必要ないと思います。
あなたが何を重視されるのか次第で、選択すべき答えは変わりますね。
あなたはどちらが好みですか?
メリット、デメリットの説明をしてきました。
当然、すべての会社や物件に共通する内容ではなく、そういった傾向があるという話です。
前述したデメリットも、しっかりとした物件や業者の選定ができれば、デメリットではなくなる可能性もあります。
私自身は、建売住宅そのものを肯定も否定もしていません。
「あなたがなぜ家を買おうと思ったのか?」「どのような暮らしがしたいのか?」これらで答えは180°変わります。
ただ、どのような答えを出すにせよ、一時の『家、買っちゃおうかな?』という気持ちで簡単に決断をしてほしくはありません。
買うか?買わないか?の判断がすぐにできてしまう建売住宅だからこそ、一度冷静に立ち止まってしっかりと考えてほしいと思います。