住宅ローンについての相談が多い当事務所。
「変動金利と固定金利、どちらが良い?」「どこの銀行でローンを組むべき?」など、質問される内容は絞られているのですが、
これもとても多い質問です。
多くの人が『住宅ローンをたくさん借りると、利息の支払いが多くなるので、できるだけ現金を入れた方がよい』と考えているようです。
利息についてはその通りで、多く借りれば多くの利息がかかります。
だからこそ、
- 頭金はできるだけ入れたほうが良い
- 住宅ローンはできるだけ借りず現金を使うべき
このように考える人がとても多いです。しかし、、
これは間違い
確かに住宅ローンを多く借りれば、多くの利息を払うことになります。
「もったいない」と思うかもしれません。
しかし利息のことだけを考え、できるだけ現金を入れようとするのは、非常に危険です。
非常に危険ですし、場合によっては損をする可能性すらあることを、しっかり学んでいただきたいですね。
今回のコラムでは、安易に頭金を入れてしまうと後悔してしまう理由を5つご紹介します。
① 今後大きな出費がある
家を買ったあと、大きな買い物を控えている場合は注意が必要です。
典型的な例は「車の購入を控えている」場合です。
「現在乗っている車をもうそろそろ買い替えしないといけない。300万円の新車を購入しようと考えていて、一括ではなくカーローンを検討している」みたいな感じですね。
しかし、カーローンは住宅ローンと比べて、圧倒的に金利が高いのです。
カーローンと同様、教育ローンも住宅ローンに比べて金利がとても高い傾向があります。
そのため近い将来、大きな出費があることが予想でき、何かしらのローンを組む可能性がある場合は、そのローンの金利と住宅ローン金利を比較して頭金を入れるべきかを考えた方が良いですね。
② もしもの場合の貯金を残す
人生、一寸先は闇。
この可能性はどなたにもあります。
給料の減額、リストラ、会社の倒産・・・まったく自分には関係ないと言いきれる人は少数でしょう。
不安を煽るわけではなく、実際に多くの人がコロナ禍で、先行きの見えない世界を経験したのではないでしょうか。
様々な外的要因によって見込んでいた収入がいきなり減額になってしまった場合、その収入を補うためには、ある程度の貯金が必要です。
理想は、生活費の1年分。具体的には200~300万円程度。
少なくとも「貯金がほとんどない」という状況は、非常に危険です。
また、想定外の出費が必要になってしまうこともあるでしょう。
例えば、
- 車で事故を起こしてしまった
- 冷蔵庫が壊れ、買い替えないといけない
- 家族が病気になってしまった
- 両親が亡くなり、葬儀費用がかかる
など、色々とあるかもしれません。
こういった場合に備えて、ある程度の貯金を残しておくことは、とても大切です。
③ 住宅ローン控除を上手に活用
年末のローン残高に応じて、所得税や住民税から税金の還付を受けることができる「住宅ローン控除」。
これは住宅を購入したら必ず受けられる制度ではなく、住宅ローンを利用して家を買うと受けられる制度です。
控除される金額は、年末に残っている『ローン残高の0.7%(2023年~2025年)』が上限となります。
ローンが3,000万円残っていれば21万円、2,500万円残っていれば17.5万円。
住宅ローンの金利と納税額を比較し、人によっては利息よりも税金の控除額の方が多くなることもあります。
無闇に現金を入れた方がお得になるという訳ではないのですね。
④ 団体信用生命保険の存在
住宅ローンを利用する際には、一部の例外の除き、金融機関の指定する『団体信用生命保険』という生命保険に加入しなければなりません。
この保険は住宅ローンを組んだ後、債務者が死んだりガンになった場合に、残りの住宅ローンがチャラになるという保険です。※保障内容は銀行によって違います
あなたがもし、3,000万円のローンを組み、家を購入した後に亡くなってしまった場合、団体信用生命保険に加入していればローン残高が0円になります。
残された家族が引き続き、住宅ローンを払いつづけなければならない…ということにはならないのです。
このことを踏まえて・・・
もし、3,000万円の家を購入するとき、現金を3,000万円持っているとしましょう。
その時、どちらの選択をしますか?
A:現金3,000万円、ローン0円で買う
(貯金残高0円)
B:現金0円、ローン3,000万円で買う
(貯金残高3,000万円)
Aで買えば、金利はもちろんかかりません。
Bで買えば、金利はかかってしまいます。
しかし、もし住宅購入後にあなたが亡くなってしまったり、ガンになったとしたら?
【(ローンを組んでいない)Aの場合】
・家は残る
・もちろん住宅ローンの支払いはなし
・貯蓄残高は0円
【(ローンを組んでいる)Bの場合】
・家は残る
・住宅ローンの支払いは団体信用生命保険のおかげで0円になる!
・貯金残高は3,000万円!!
どうでしょう?圧倒的な差がありますよね。
このように住宅購入後の『死』や『ガン』などのリスクを考えると、必ずしも現金を入れることが正解ではないことが実感できるのではないでしょうか。
住宅ローンを借りることは、イコール、大きな金額の生命保険に加入するのと同じ意味を持ちます。
既に他の生命保険に加入している人なら、場合によってその生命保険を解約(減額)しても良くなるかもしれません。
見直した保険料の分、家計改善につながります。
また、民間の生命保険の場合、年齢が高くなるにつれて保険料も高くなります。
しかし住宅ローンに付随する団体信用生命保険の場合、年齢によって保険料が上がることもありません。
死亡リスク、疾病リスクが高くなる40歳代、50歳代で住宅購入を検討している人は、こういった観点からも団体信用生命保険を上手に活用するようにしましょう。
⑤ 住宅ローンの金利以上に運用ができる
例えば、頭金を100万円入れようか迷っているとします。
仮に100万円を1%で10年間借りると、利息を含めた総支払額は1,051,249円です。
利息が51,249円。頭金100万円を入れれば、その利息を浮かすことができます。
5万円も利息を払わないといけないなら、頭金100万円支払った方が良いのでは?と、考えられる人もいるでしょう。
しかし、住宅ローン金利の1%よりも高い利率で『運用』できたらどうでしょうか?
運用とは、投資信託や株式投資、債権や保険などの商品を使って「お金を増やす」ことです。
100万円を頭金ではなく運用に回し『1年間で2%ずつ』で増えたとしたら、100万円は1年で102万円となり、それが10年間続くと120万円になります。(※単利での計算)
住宅ローンを利用して利息51,249円を払ったとしても、手元の100万円を運用して20万円の成果を得れるなら、頭金を入れずに運用に回した方が良さそうですよね。
2024年から新NISA制度も始まります。
資産運用に興味があり、住宅ローンの利率以上の運用成果を出せる確率が高いなら、住宅ローンをできるだけ借り、自己資金は投資に回す方がお得になります。
少しレベルの高い話ではありますが、実際にこのようにして自己資金を運用に回している人はたくさんいます。
新NISA制度を利用し、2~3%の運用益を目指すことは、そこまで難易度の高いことではありません。
まとめ
以上のことから、必ずしも頭金を多く入れることが正解とは限りません。
将来の支出予定や、もしもの出来事にどのような対処をしようと考えているかによって、ベストな選択は変わってきます。
その他にも、
・年齢
・職業
・貯蓄残高
・マイホーム購入金額
・性格、心理的な癖
などによっても、ベストな選択は変わります。
必ずしも頭金を入れない方がよい場合だけではなく、頭金をいれた方がよい場合もあると思います。
しっかり自分が置かれた状況などを見極めて、判断することが大切ですね。