「貯金ゼロで家を買う」は無謀か?FPが教える理想論ではない「攻め」の解決策

貯金ゼロ

あなたは今、いくらくらいの貯金(資産)がありますか?

当事務所に相談に来ていただく方でも、家計の状況は人によって様々です。

1,000万円以上ある人、100万円以上ある人、50万円以上はあるという人。

そしてなかなかお金を貯めることができず、貯金がほぼない…具体的には『30万円未満』という方もいらっしゃいます。

結婚したばかりで結婚式や車を買うためにお金を使い、一時的に貯金がなくなったという家庭もあります。

その家庭の状況次第ですから、一概に「貯金がないのはダメですね」とも言えません。

とはいえ、資産はあるに越したことはないのは事実です。

特に、これからマイホームを買う予定なら『頭金として現金を使う』『家具・家電を買う』『予測不能な支出があった場合に備える』など、貯金をしっかりしてから家を買った方が、精神的な安心感はあります。

YouTube等でも、ファイナンシャルプランナーが「マイホームを買うなら、しっかりお金を貯めてから買いましょう!」と発言されていることが多いでしょう。

これについては、当たり前というか、面白くもない「ごく一般的な回答」だなと思います。

不特定多数の方へのアドバイスとしては、決して間違っていません。

しかし、必ずしも貯金がない人に対して「お金を貯めてから家を買いましょう」がベストなアドバイスかといえば、それは間違いだと私は考えています。

私は『貯金がほぼできていない家族』のマイホーム購入のお手伝いをした経験があります。

貯金が「ほぼ0円」に近く、毎月のお給料を、毎月の生活費などに使いきっている状態です。

FPではなくとも、貯金ゼロのそんな状況で住宅ローンを借りて家を買うことに対し「それって危険じゃない?」「しっかり頭金を100万円くらい貯めて、それから家を買っても遅くはないのでは?」このように思う方も多いと思います。

これはおっしゃる通りですし、それができるならそうした方が良いことは、百も承知です。

今の家計ではそれができない

しかし、なかなかそれができません。

「貯金をしてから家を建てる」は、あくまでも理想論です。

例えば、世帯収入550万円の家庭の場合。

家賃補助がなく賃貸アパートに毎月9万円の家賃を払っている状況で、生活費を切り詰めながら、貯金を100万円するのはとても大変です。

1年後のマイホーム購入を目標に『1年で100万円』を貯めるなら、毎月90,000円の家賃を払いつつ、さらに83,000円(100万円÷12ヶ月)の貯金をしなければなりません。

毎月合計で『173,000円』も住居と貯金に回す計算になります。

正直これはかなり厳しい…わかりますよね?この感覚。

下手をすれば、貯金をするのに3年以上かかってしまう可能性もあります。

もしもその期間に、金利が上がったり、土地価格や建築費が上がってしまったら、せっかく貯めた100万円の意味が0になってしまう可能性もあります。

それなら今の家賃と同じ「毎月9万円」の返済になるように住宅ローンを組み、マイホームを購入してから貯金をする方がよりスピーディーに、より多くの金額を貯めることができる場合もあります。

無駄な家賃を払うことがなくなりますからね。

現実問題として「お金を貯めた方が良い」のはわかっている。

しかし「貯めたくても、貯めれる状況ではない」という家庭の場合、「家を買ってから貯金をしましょう」という選択肢もアリなのです。

貯金ゼロでも買っていい条件

しかし、すべての家庭が貯金ゼロの状態で「マイホーム購入に踏み切っても大丈夫」または「踏み切った方が良い」かといえば、やはりそうではありません。

簡単にいうと、「家を建てた後の方が、明らかにお金を貯められる見込みがある家庭」に限られます。

具体的には、

  • 格安スマホへの変更など、通信費を劇的に下げられる
  • 住宅ローンに付帯する団体信用生命保険を活用し、今の高い保険料を削減できる
  • 奥様がパートから正社員になるなど、世帯収入が上がる予定がある
  • 奨学金やカーローンの支払いが、あと2〜3年で終わる

このように、未来の家計が好転することが「数字」として見えているのであれば、今すぐ購入に踏み切る価値があります。

実際、私がお手伝いしたご家族も、この条件に当てはまっていました。

購入後に奥様の収入が予定通り上がり、カーローンの返済も終了。

アパート時代と変わらない支払いで暮らしながら、今では着実にお金が貯まる家計へと変化しています。

攻めの問題解決

「もっと頑張って生活費を削りましょう」

これは解決策のように聞こえますが、実は何も解決していません。

それができれば苦労しませんし「頑張る」といった精神論だけで家計が劇的に変わることは非常に稀です。

住宅ローンという大きな決断をすることで、家計全体の構造を作り変え、無理なく貯金ができる仕組みを整える。

これは一見するとリスクの大きな「攻めの解決方法」に見えます。

しかし、シミュレーションに基づいた判断であれば、その家庭にとってのベストな選択にもなり得るのです。

勘違いしないでほしいこと

私が伝えたいのは「貯金があるから大丈夫」とか「ないからダメ」という単純な話ではありません。

今回の話は、あくまで「貯金ゼロでも、戦略的に家を買うことで人生が好転するケースがある」という一例です。

無計画に「貯金ゼロでも大丈夫ですよ!」と背中を押しているわけではありませんので、そこはくれぐれも勘違いしないでくださいね。

大切なのは、今の通帳の数字だけを見て不安になることではなく、「家を買った後の生活がどうなるか」を正確に予測することです。

「貯金をしてから買う」よりも「買ってから貯める」方が、あなたの人生を豊かにしてくれるかもしれない。

一度、フラットな視点で、あなたのご家庭にとっての正解を考えてみてはいかがでしょうか。

ちなみに100万円以上の貯金があったとしても、将来のシミュレーションをした結果、買うべきではない人には「今は買うべきではありません」と、ご相談者様にはハッキリお伝えしています。

新松 尊英
札幌住まいのFP相談窓口代表。札幌で住宅会社の営業マンとして働いた後、中立的な第三者立場から住宅購入の相談ができる仕組みを確立するために独立。

保険や住宅を売ることを目的にせず、有料で相談を受けている住宅購入専門のファイナンシャルプランナー。そのスタイルが支持され、札幌市近郊を中心に累計1,000件以上の住宅コンサルティングをおこなっている。

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