良い40年返済、悪い40年返済

当たり前のようになってきている住宅ローンの40年返済。

ご存知かもしれませんが、原因は土地価格や建築資材高騰によるマイホーム購入価格の上昇です。高いですよね…

現在、札幌市内で土地を購入してから注文住宅を建てようとするなら、最低4,500万円はするでしょう。

10年前なら札幌市内で諸経費込3,000万円~で注文住宅が建てられる選択肢がありました。

3,000万円を金利1%、35年返済、ボーナス返済なしで考えると、月々の支払いは約85,000円。

「2LDKの賃貸マンションP込み」とさほど変わらない金額です。

これなら結婚して子どもが生まれた(生まれる)ご家族が「そろそろマイホームを検討しようか」となるのは当然の流れかなと思います。

しかし4,500万円ともなると、ローン返済額は125,000円以上となり、賃貸マンションから40,000円以上の住居費が増加となってしまいます。

5,000万円のローンなら140,000円を超えますから、気軽にマイホームを買おうなんて考えられません。

実際のところ、住宅会社の営業マンも「こんな月々の支払額が高いと、誰も買ってくれない…」と頭を抱えているのです。

それでも家を売らなければならない彼らは何を考えるでしょう?そう、40年返済の提案です。

40年返済にすると?

前述の35年返済で4,500万円を借りた場合、毎月の返済額は約125,000円でした。

さて、35年→40年払いにするとどうでしょう。

・4,500万円、金利1%、ボーナス返済なし

・35年 毎月返済→約125,000円

・40年 毎月返済→約113,000円

・40年 ボーナス込返済→毎月97,000円、ボーナス時プラス100,000円

このように40年・ボーナスを組み合わせ、毎月の返済額を少なく見せて「これなら買えるんじゃない?」という雰囲気にするのです。

毎月の返済額が6桁(100,000円以上)になるのか、5桁(99,999円以下)になるのかで購入マインドは想像以上に変わりますからね。

このように昨今の住宅価格の高騰に併せて、住宅ローン40年返済での提案が当たり前のようになってきているのです。

40年返済はありなのか?

さあ本題。40年返済ってどうなんでしょう?

住宅購入者の平均年齢は、肌感覚ですが35歳前後かと思います。

35歳時に40年返済のローンを組むと、完済は75歳。

自分がこれまで生きてきた期間よりも長い期間を、住宅ローンとお付き合いしていくことになります。

仮に65歳まで働いていたとして退職後の残り10年、どのように返済していくのでしょう?

「退職金で繰り上げ返済すればいいんですよー」なんて営業マンから言われて「大丈夫かも!」と真に受ける人はいないと思いますが…

実際のところ、退職金がいくら貰えるのか正確に理解していない人が多いですし、さらに加えて老後資金も蓄えなければなりません。

冷静に考えれば考えるほど「40年返済ってやばくない?」とは思いませんか?

良い40年返済

とはいえ、40年返済自体が絶対に悪いかといえば、そうとも限りません。

40年返済にも「良い使い方」と「悪い使い方」があるのです。

例えば、良い40年返済の使い方ですが、

例1)

手元に5,000万円の自己資金があり、買おうと思えば現金で買うことも可能。

しかし、住宅ローンを利用すれば住宅ローン控除が受けられるので、ローンを借りた方がお得。

また手元の5,000万円は資産運用に回して住宅ローンの利息以上の運用益を見込んでいるので、現金を使う理由がない。

例2)

資産は少ないが、今後の人生設計(ライフプラン)を考えると、夫婦共働きなら40年返済の住宅ローンを組んでも毎年200万円程度の貯金ができる。

しかも夫婦ともに公務員で退職金が1,500~2,000万円ずつ見込める(合計3,000~4,000万円)。

結果として65歳の退職時には資産が5,000万円以上あり、退職時の一括返済も可能。

35年返済でも返済は可能だが、毎月の返済額を抑えたい為、多少利息はかかったとしても40年返済を選択しよう。

こんな人は40年返済を選択しても、まったく問題ありませんね。

簡単に言えば「40年返済で組んでも返済できる人」なら、上手に40年返済を活用してもいいのではないかと思います。

よくよく考えれば当たり前の話です。

悪い40年返済

一方で40年返済を選択した理由が、

・毎月の返済額を少なくしないと買える気がしない!厳しい!

・営業マンから「最近は皆さん40年返済ですよって言われて…」

・返せなくなったら、家、売ればいいじゃん!

こんな感じの理由なら危ないですね。

危険な問題を先延ばしにし、逃げているだけです。

おそらく購入後、10年は問題なく返済していくことができるでしょう。

ただし10年経過するあたりから、住宅ローン控除は終わりを迎え、子どもは高校生・大学生へと成長して学費が多大にかかるタイミングに突入します。

ようやく学費が支払い終わった頃(約20年後)、住宅ローンの支払いはようやく『折返し地点』。

住宅ローンを払いつつ自分たちの老後資金を貯めたいところだが、もう60歳を迎えており十分な資金を貯められない。

住宅ローン金利が上昇しており、毎月の返済額が増えている可能性も否定できません。

この流れに乗ってしまうと、老後破綻する可能性が一気に高まりますね。

正直、重要ではない返済期間

さて、ここまで40年返済の是非について話してきましたが、実際のところ「35年返済にするか or 40年返済にするか」で天と地ほどの違いがあるかといえば全くそんなことはありません。

正直、返済年数など、さほど重要ではないのです。

35年返済でも、40年返済でも、自分の返済能力以上のローンを組んでしまったら人生しんどくなることに変わりありません。

マイホーム購入で一番大切なのは、間違いなく『適切な予算の把握』です。

適切な予算さえ把握できていれば、返済年数が5年、10年違っても人生を大きく狂わせることはありません。

返済年数を検討する前に、自分たちがローンを組んでも問題なく返済していける金額を把握しておきましょう。

返済年数を決めるのは、その後で十分遅くはないのです。

新松 尊英
札幌住まいのFP相談窓口代表。札幌で住宅会社の営業マンとして働いた後、中立的な第三者立場から住宅購入の相談ができる仕組みを確立するために独立。

保険や住宅を売ることを目的にせず、有料で相談を受けている住宅購入専門のファイナンシャルプランナー。そのスタイルが支持され、札幌市近郊を中心に累計1,000件以上の住宅コンサルティングをおこなっている。

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