「年収の○倍までなら返せる」はウソ

私の事務所では『最適な住宅購入金額』を

■現状の収入や支出

■趣味や旅行にかけたい費用

■子育て、教育方針(主に進路)について

■車の買い替えタイミングや車種

■現在加入中の保険の内容

こんな話を伺いながら、適正な住宅購入予算を診断、シミュレーションしています。

事前にこのようなFP相談をしてからマイホームを購入しようと考える人は、私の肌感覚だと全体の1~2%しかいないと思います。※ハウスメーカーと癒着しているFP相談を除く

私がいうのもなんですが、こういった相談をした上でしっかりと予算を見極める人は、素晴らしいと思います。

実際のところ『現在と未来』の『収入と支出』を把握した上で予算を診断する方法以外、適正な購入金額を知る方法はありませんからね。

一番ダメな予算の決め方

購入者:「皆さん、予算ってどうやって決めているのですか?」

営業マン:「年収の7倍~10倍くらいは住宅ローンが借りられるので、その範囲で家を建てていますよ」

これはハウスメーカーの営業マンと購入者さんがよくされる会話です。

初めて家を買う人なら、どうやって予算を決めて良いのか、正直わかりませんよね。

わからないなりに『何か』を基準にしようとするのですが、基準になりそうなものと言えば、

■現在の賃貸アパートの家賃

■同僚や友人が購入した価格と同じくらい

■年収から導きだした借入可能な金額の範囲内

このくらいでしょうか??

現在、住宅を購入する方の90%以上がこれらの基準を使って購入予算を設定していると思います。

しかし残念ですが、これらはすべて根拠のない決め方ですね。

根拠のない理由

例えば、現時点では8万円のアパート家賃が払えていても、子供の学費がかかる年齢になった時に、同じ金額を払えるかはわかりません。

また、今は共働きなので収入もダブルで入ってくるが、産休や育休、仕事を辞めたとしても、払っていけるかわかりません。

同僚や友人とも生活費が違いますから、身近な人が購入した金額を参考にしても意味がありません。

このような決め方には、住宅ローンを安心して返していけるという根拠は、全くありませんね。

そして、冒頭の会話のような『現在の年収』から『借りることができる金額』を算出し、その範囲内で家を建てようとするのは、本当に『最悪』です。

「年収の何倍ならOK!」なんて何の根拠もないのに、「みんながそうしているから」という理由でそのまま計画を進めてしまうのは、本当に危険ですよ。

借りれると返せるは違う

よく言われることですが、「借りられる金額」と「返せる金額」は全く違います。

銀行が貸してくれるということは、銀行が「しっかり返済できると判断した」と受け入れてしまう人もいるみたいですが、これは間違いです。

銀行はある程度、返済を見込んでいますが、最悪、土地と建物を差し押さえすることも視野に入れて貸付する金額を決めますからね。

ということで、年収を基準として借入金額を決めるのが全く根拠のない方法である理由を3つ、順番に説明していきます。

① 稼げる期間が違う

Aさん:現在35歳(残り25年勤務)

Bさん:現在45歳(残り15年勤務)

年収が同じく500万円で、定年退職が60歳の人だったとしても、このように今後働ける期間は現在の年齢により異なります。

つまり、これから稼げる金額も変わりますよね。

Aさん:500万円×25年=1億2500万

Bさん:500万円×15年=7,500万

その差は『5,000万円』です。今後の収入が5,000万円も違うのに、同じ金額のローンを借りても大丈夫とはなりませんよね。

「現在の年齢」は当然として、「退職する年齢」や「その後の働き方」や「退職金の有無・金額」などを把握し、考慮した予算設定をしなければいけません。

② 支出は家庭により違う

Cさん:子ども0人、出産予定もなし

Dさん:子ども3人

Eさん:子ども5人

同じ年収500万円の家庭でも、子供の人数が違えば、支出が全然違うと思いませんか?

子ども一人を大学まで通わせる為には、最低でも1,000万円以上かかると言われています。

公立、私立の選択肢次第では1人あたり1,500万円以上もかかる場合もあります。

上記の例では、Cさんは子どもがいませんから教育費はかかりません。

しかし、Eさんは最低でも1,000万円×5人=5,000万円の教育費がかかることになります。

学費だけでこの差ですし、他にも「食費、外食費」「水道光熱費」「旅費」「衣服代」など、家族が多くなるにつれて支出が多くなる項目はたくさんあります。

しっかりと「現在の家族構成」「出産予定」「進学についての考え方」「学資保険への加入の有無」などを把握、考慮した予算設定をしなければいけませんね。

③ 手取り金額が異なるから

『年収500万円』と『年収1,000万円』を比較すると、年収は単純に2倍ですよね。

では、2倍多くの住宅ローンを借りても良いかというと『NO』です。

なぜなら「税金(税率)」「社会保険料」「所得控除額」これらが違うため、手元に残る金額が全然変わるからです。

いわゆる『手取り』として残る金額の割合が、年収によって違うんですよね。

詳しい説明はここでは割愛しますが、年収が多くなる程、税率が高くなり、手元に残るお金の割合が少なくなります。

その為、税や社会保険料を差し引く前の『税込年収』を参考に予算を決めるのは、全く根拠がないことがわかります。

さらに、年収の中には『現在住んでいる賃貸の社宅費用』などが含まれている場合もあります。

もしマイホームを持った時に、この社宅費用や家賃補助の支給額が減額されるとしたら、マイホームを持ったことで実質、年収が下がることになります。

その為、年収という“表面”だけではなく、その“内部”がどのようになっているのかを正しく把握する必要があるのです。

・・・・・・

年収を基準とした借入金額の設定は、本当に危険なのですが「皆さん、そうしていますよ!」と言われると、なんとなく信じてしまうのが日本人のようです。

住宅購入において、一番大切なのは『無理のない適正な購入予算』をしっかりとした方法で知ることです。

適正な購入金額さえ把握できていれば、家を買った後も家計が破綻するのを防ぐことができます。

当事務所で「あんしんマイホーム資金計画書」を作成すれば、しっかりとした根拠のある購入予算を見極めることができます。

人生最大の買い物をするにあたって利用するサービスとしては、非常に割安な金額で設定していますので、是非活用してみてください。

新松 尊英
札幌住まいのFP相談窓口代表。札幌で住宅会社の営業マンとして働いた後、中立的な第三者立場から住宅購入の相談ができる仕組みを確立するために独立。

保険や住宅を売ることを目的にせず、有料で相談を受けている住宅購入専門のファイナンシャルプランナー。そのスタイルが支持され、札幌市近郊を中心に累計1,000件以上の住宅コンサルティングをおこなっている。

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