『設計コンペ』はするべきなのか?

あなたが家を買おうとするなら、どうやって住宅会社を決めると思いますか?

選択肢としては「住宅展示場に行ってみる」「ネットで『札幌 住宅会社』で検索する」「雑誌を買って選択肢を絞る」「住宅の無料相談所に行く」「兄弟や同僚、知人に紹介してもらう」こんな感じだと思います。

最近だとインスタ広告からモデルハウスを見学して、具体的な商談に進んでいく人も多くなってきました。

建築条件付き土地(土地の所有者である住宅会社で建てることを条件で販売される土地)の場合を除いて、当然、あなたが建てたい住宅会社で家を建てることができます。

初めは適当に雑誌やネットを見ながら「この会社は良い」「この会社はダメだ」みたいに数社に絞っていく感じ。

ただ…数社に選択肢を絞るまでは簡単でも、建てられる家は当然1軒だけですから、1つの会社に絞らないといけませんよね。

土地が決まった後、最終的に建ててもらう1社を決めるまでの工程として「色んな会社と打合せを並行していき、提案される間取りや見積りを比較させる」設計コンペをする人もいれば、

「ある程度、特定の1社と濃密な打合せを進めて特段の問題が発生しなければそのまま契約をする」という人もいます。

どちらにもメリット、デメリットがある為、その人の性格や建てたい家によってどちらの方法を選ぶか検討しましょう。

今回は「設計コンペをする」視点からメリットとデメリットをお伝えします。

いくつも提案を受けられる

メリットは、比較できること。数社から提案を受けることで比較検討できるようになりますよね。

金額はもちろん、「断熱性能・耐震性能」「アフターフォロー」「営業マンの対応の仕方」など、会社ごとに比較して検討できます。

特に各社からの間取図の提案は「うーん、イマイチな提案だな」と思うこともあれば「おおっ!リビングをココに配置するとは!」「そんな選択肢があるとは!さすがプロ」みたいにワクワクすることもあると思います。

たくさんの住宅会社・設計士がいますから、いくつもの提案の中から一番しっくりくるものを選ぶことができるでしょう。

こういった提案を色々な会社から受けることは、素直に「楽しい」と思います。間取りを見ているだけでも楽しいのに、それを複数から見せてもらえるのですから。

また、価格についても数社を比較してみることで、だいたい適正値がわかってきます。

私達は500mlのコカ・コーラが60円で売っていたら安いと感じますが、200円で売っていたら高いと感じますよね。

これは私達の中で「500mlのコーラの相場は100円~160円」という基準があるから判断できることです。

一方、マイホームを買うのは初めてですから、何が安くて何が高いのかを測るための基準がわかりません。各社を比較することで、ある程度、注文住宅の相場観を知ることもできます。

また、場合によっては競わせることで特別な値引きやオプションサービス合戦になる可能性もあります。※私は基本的に値引きする会社を信用していませんが。

住宅会社が本気になれない

続いてデメリットです。元住宅営業マンの私が思う一番のデメリットは「住宅会社が本気になれないこと」ですね。

住宅会社を決めることは、結婚する相手を決める過程に近いのかもしれません。

住宅会社も「あなたが好きです、結婚してください」と言ってくれる人には「私もあなたのために一生懸命頑張ります」と手間と時間を惜しまないと思います。(既婚の皆さん、どうでしょうか?)

しかし「あなたのことも気になっているけど、あの人のことも気になっているんだよね」と言われている状態では、本気になるのが難しいというのも想像できると思います。

土地が見つかり、コンペのように数社を比較検討したいというのは、相手に対してこういった感情を与えてしまいます。

人気のある優良な会社や営業マンなら「コンペなら、うちの会社は参加しません」「その時間も労力ももったいないですし」「うちで建ててくれる人に時間を使いたい」「他社を検討するなら、そちらでどうぞ」と言われてしまうこともあります。

一見、高飛車に感じる部分もありますが、時間も労力も限られている優良な会社では当然かなと思います。

逆を言えば「是非、コンペでもやらせてください!」という会社は仕事を必死に探している。またはコンペをしても勝つ自信がある。いずれかです、おそらく前者が多いですが。

ちなみに「競合相手がいないなら、たくさん利益を取ってやろう!」なんて思う会社は少なく、むしろ「この人の為に、できるだけお得にいい家を建ててあげたい!」と思うのが普通の営業マン心理だと思います。

何が良いのかわからなくなる

住宅会社にはそれぞれ特徴があります。

デザイン優先の住宅会社もあれば、性能重視の工務店もあります。安く建てられるローコスト住宅、高いけど丁寧に建ててくれるハウスメーカーなど。

その他にも「基礎断熱or床下断熱」「一種換気or三種換気」「外断熱or内断熱」「在来工法orツーバイフォー工法」「ハウスメーカーor工務店」「自社大工or業務委託大工」「外壁は…タイルorガルバリウム」こんな感じで、家づくりは選択の連続です。

選択肢が多くなり、正解がわからないと何が良いのかわからないという迷子状態になります。

そして最終的に色々な人の意見に流されてしまい、自分たちが当初描いていた理想の家とは全く違う家が完成してしまうのはよくある話です。

迷った挙げ句、「デザインそこそこ」「間取りの提案力そこそこ」「性能そこそこ」「ゆえに価格もそこそこ」の家が完成する感じ。

中学校の成績表ではありませんが、5段階中、全ての項目でオール3の家を選んでしまう人も多いでしょう。

それが悪いとは思いませんが、自分たちが建てたかった理想の家はオール3の家ではないことが多く、「2の部分もあるが、4の項目もある」「1の部分もあるが、5の項目もある」こんなメリハリのある家だったりします。

色々な会社にコンペさせるとたくさんの情報が入ってきてしまうので、自分たちが本当に大切にしたい部分がグラグラ揺らいでしまうかもしれません。

自分の性格や、建てたい家の理想などでコンペをさせるのが良いのか・悪いのか、選択肢は変わってくると思いますから、まずは家族内でどのように住宅会社を決めていくのかを会議すると良いですよ。

新松 尊英
札幌住まいのFP相談窓口代表。札幌で住宅会社の営業マンとして働いた後、中立的な第三者立場から住宅購入の相談ができる仕組みを確立するために独立。

保険や住宅を売ることを目的にせず、有料で相談を受けている住宅購入専門のファイナンシャルプランナー。そのスタイルが支持され、札幌市近郊を中心に累計1,000件以上の住宅コンサルティングをおこなっている。

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