直近の住宅ローン事情について、ある銀行担当者のお話を伺いました。
- 注文住宅の場合、借入金額の平均は5,000万円
- 住宅ローンを借りる人の平均年齢は33~35歳前後
- 返済年数は「40年返済」を選ぶ人が9割
昨今の建築費高騰や晩婚化などを考慮すると、借入金額と借入年齢については想定通りといった感じです。
しかし、40年返済を選ぶ人が9割(実際には「ほとんど」という言葉を使っていました)という現状には少し驚きを感じています。
単純に35歳の人が40年返済を選択するということは、ローンの完済年齢が75歳ということになりますからね。
65歳で定年退職を迎えるとして、その後、10年はどのようにローン返済をしていく計画なのでしょう?
実際に40年返済を選択した人に、話を聞いてみたいところです。
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必ずしも40年返済が悪いわけではない
このような文章を書くと、私があたかも40年返済を否定しているように感じますが、そんなことはありません。
結論から言えば、35年返済だろうが、40年返済だろうが、50年返済だろうが、最終的に返済ができるなら全く問題ないと、私は思っています。
重要なのは「返済できる見込みがあるか?」に尽きます。
例えば、しっかりとライフプランを作成し、将来的に返済見込みがハッキリしている状態で「戦略的に返済年数を40年にしている」のであれば、40年返済という選択も素晴らしいと思います。
逆に、返済見込みの根拠がないのに「みんな借りているから大丈夫だろう」「(金額はわからないけど)退職金がある(だろう)から大丈夫」と自分を正当化させて借入している人は、非常に危険だと思いますね。
そういった考えで安易に『返済を後ろ倒し』する40年返済は、狂気の沙汰だと思います。
40年返済の出口戦略
出口戦略とは、最終的にどういった方法で終わりに向かっていくのかを計画立てておくことを言います。
一般的に住宅ローンを借りる際に「出口戦略」まで考えている人は極少数でしょう。
しかし40年返済、または退職後にもローン返済が残るということであれば、出口戦略とまでいかずとも「どのようにして返済しきるのか」の道筋は立てておくべきだと思います。
私が考える出口戦略としては、大きく分けて2つあります。
毎年、繰り上げ返済をしていく
ひとつは、ローン契約時には40年返済を選択するが、最終的には繰り上げ返済を何度もして、65歳までを目途に完済してしまうという方法です。
例えば35歳の人がローンの契約時には40年返済を選択するものの、毎年数十万円を繰り上げ返済しつづけることで、最終的には『40年→30年』で返済を仕切ってしまうという計画を立てるということです。
繰り上げ返済とは、毎月の支払以外に余裕資金を使って、一部を前倒しして返済することをいいます。
これをすることで利息を軽減することもできますし、結果的に返済年数を短縮することができます。
あるデータでは、繰り上げ返済を何度もして、28年前後で完済してしまう人が多いようです。
※おそらく古いデータ、数十年単位でのデータなので、直近の建築費高騰を考慮すると現代の人が繰り上げ返済をして完済をするには、もう少し時間がかかると推察されます
退職金、つみたてNISAで一括返済
もうひとつは、退職金やつみたてNISAなどのまとまったお金ができるタイミングで、一括で繰り上げ返済をする方法です。
仮に5,000万円を35歳の人が40年返済で借りた場合、65歳時点で、残りの債務額は1,500万円前後(金利1%にて計算)になります。
それだけの退職金が見込めるのであれば、それを元手に返済できるでしょう。
また、2024年から拡充されたつみたてNISAを使い、35歳から毎年50万円×30年間にわたり資産を積み立てていれば、投資元本のみで1,500万円は貯まっている計算になります。
実際には運用益も上乗せされているでしょうから、投資元本も毎年50万円未満でも返済できる資産にはなっているはずです。

問題はこの出口戦略が使えるのか?
とはいえ、簡単にこの出口戦略が取れるかといえば、やはり入念な事前計画が必要でしょう。
毎年繰り上げ返済したくても、しっかり貯金が貯まっていく家計状況でなければ、繰り上げ返済をすることはできません。
1,500万円を貯めたくても、マイホーム購入後に毎年50万円もの資金をNISAに充てることができるのか。
お子様の学費がかさむタイミングでNISAを解約しなければならない…といった状況に陥らないのかの確認も必要です。
また、退職金があることは確定しているものの、それを繰り上げ返済に充ててしまうと老後資金がなくなってしまう…ということになれば、退職金を使うことができませんよね。
なので、そういった出口戦略を立てる上では、その他の日々の生活費や教育費関係も含めて計画を立てなければならないのです。
ちなみに何も考えなければ、35歳から40年のローン返済で75歳まで毎年支払っていくことになりますから「75歳まで働く」というのもひとつの戦略となるでしょう。
「働けるうちは働き続ける!」これも立派な戦略のひとつだと思います。
出口戦略も考えないまま計画を進めている人は、75歳まで働くことを覚悟したうえでマイホーム購入をしましょう。
計画的に返済年数を決める
実情としては、おそらくマイホーム購入をされる方が40年返済を選んでいるというよりも、注文住宅やマンション販売の営業マンが40年返済を勧めているのだと思います。
35年返済よりも40年返済の方が、毎月のローン返済金額が少なくなり、家を売りやすくなりますからね。
「最近は皆さん、40年返済ですよ」という甘い言葉を真に受け、「きっと大丈夫」「なんとかなる」と深く考えずに決断してしまう。
このような流れで、安易に40年返済を選択してしまっているなら危険です。
人生で一番大きな買い物であるマイホームですから、しっかりと計画的に、出口戦略までを考えて購入するようにしましょう。
保険や住宅を売ることを目的にせず、有料で相談を受けている住宅購入専門のファイナンシャルプランナー。そのスタイルが支持され、札幌市近郊を中心に累計1,000件以上の住宅コンサルティングをおこなっている。