家を建てようと思い立って、まず最初にすることは何でしょう?
YouTube、Instagramなどの「SNS検索」ではないでしょうか。
「住宅展示場へ行く」「雑誌を買う」のが当たり前だった時代が懐かしいです。
理想の住まいについて分厚いカタログや雑誌をめくって「こんな感じがいいな」と曖昧に伝えていたものが、今ではスマホ一台で完結します。
これは、施主様・住宅会社それぞれに革命的な変化であり、住宅業界全体においてもプラスであると言えますね。
最大のメリットは、「言語化できない細かなニュアンス」を可視化できるようになったことです。
「北欧風」と言っても、人によって思い浮かべる色は微妙に違いますが、インスタの投稿を見せて「この床材は○○というメーカーの○○というカラーらしいので、これを使いたいです」みたいなリクエストもできるようになりました。
キッチンや建具、壁紙までもメーカー名から品番まで特定できるのですから、打合せのスピード感は格段に上がり、イメージの相違も少なくなったと思います。
さらにYouTubeでは、これまでブラックボックスだった「断熱性能」や「気密性能」といった専門的な知識が、驚くほど分かりやすく解説されています。
おかげでハウスメーカーの営業マンに言いくるめられることなく、自分たちで武装して商談に臨めるようになりました。
そういった意味でSNSの積極的な活用は素晴らしいことだと思います。
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あふれる情報の「罠」
しかし住宅FPという現場に立つ人間から見ると、この便利な環境には、半面、リスクも隠れています。
SNSで情報を集めている人にありがちなのは、要望(予算)がどんどん膨れ上がっていくという現象です。
素敵な家の写真がタイムラインに流れてくるたびに「あれもいいな」「これも取り入れたい」と理想が高くなる。
結果として、当初の予算を数百万単位でオーバーし、無理な住宅ローンを組んでしまうケースが後を絶ちません。
さらに、私たちが住む北海道においてSNSの情報は、時として「ウソ」になります。
本州のインフルエンサーが「全館空調が最高」「この間取りが流行り」と発信していても、マイナス10度台にもなる札幌の冬にそれがそのまま通用するとは限りません。
断熱の仕様も、積雪に対する対策も、本州とは基準が全く違います。
また、ネット上の「悪い噂」にも振り回されがちです。
全国的なハウスメーカーほど建築棟数が多いですから、一定数の不満が出るのは統計的に当然のことです。
あのハウスメーカーは施工が汚い。利益率がエグイ、ぼったくり。営業担当がガチャ。
ネットの噂だけを信じて、自分たちに本当に合っているかもしれない選択肢を切り捨ててしまうのは、非常にもったいないことです。
さらに素敵だなと思ったデザインを「真似る」ことにも、一定の技術的なリスクがあります。
SNSで見かける素敵な家のほとんどは、設計事務所やデザイン重視の住宅会社が施工したものです。
例えば、効率化を追求しているハウスメーカーに「同じものを作って」と頼んだ場合、住宅会社側も「できます」と安易に引き受けがちですが、慣れていない会社が写真の再現を無理にやろうとしてもできません。
完成してみて「なんか全然違うな…」と後悔するのがオチで、さらには慣れない施工が原因で数年後に不具合を起こすリスクもあります。
簡単に「理想の家」を見つけることができ、共有することができてしまう現代だからこその『落とし穴』がここにあります。

SNS時代の家づくり、3つの心構え
この情報過多な時代に、どうすれば賢く失敗せずに家を建てられるのか?
「SNSで見つけた理想」を現実に着地させるために、忘れないで欲しい3つの心構えをお伝えします。
「素敵!」の裏には「相応のコスト」がかかることを自覚する
あなたがインスタで目を奪われたその写真は、ハイクラスなキッチンやハイドアだけでなく、間接照明、巾木、造作家具、見切り材に至るまで、こだわり抜かれた「追加オプションの塊」の可能性が高いです。
美しいデザインには、それ相応の材料費と、職人の手間賃がかかります。
あなたが素敵だと思うキッチン、建具、洗面スペース、リビング空間、外壁などは、それに比例して高コストであるということを理解しておきましょう。
「写真と同じにしたい」と思う気持ちはわかりますが、その要望が自分たちの予算の範囲内でできることなのかを、冷静に見極める必要がありますね。
見た目の美しさに全力を出し切って、その後のローン返済で生活が厳しくなってしまうと、せっかく建てた素敵な家も輝かないと思います。
「北海道の家づくり」というフィルターを通す
情報を得る時は、必ず「その情報はどこの地域の話か?」を確認してください。
雪が降らない、真冬日にならない地域のノウハウは、北海道、札幌市近郊では通用しません。
YouTubeで有名な専門家が言っていることでも、北海道の厳しい気候条件を考慮していない場合は、「話半分」で聞くべきかなと思います。
「できる会社」か「できない会社」かを見極める
写真を見せて「これできますか?」と聞いたとき、二つ返事で「できます」と言う会社は、少し警戒したほうがいいかもしれませんね。
もし「できる!」というなら、過去の施工事例を見せてもらうと良いでしょう。
「やったことはないけど、できると思います。初めてですが…」では、危険すぎますね。
写真の通りの施工に慣れていない会社に「初めての挑戦」をさせるのは、あなたの家を実験台にさせるようなものです。
数年後の歪みを防ぐためには、その会社が持つ「本来の型(標準仕様、標準施工)」を尊重することも大切だと思います。
家づくりを「心の底から楽しむ」ために
SNSは、あくまで「イメージを広げるための道具」に過ぎません。
憧れのマイホームを手に入れるためにも、そして何より、一生に一度のマイホーム購入を心の底から楽しむためにも、あらかじめ「自分たちの適正な予算の範囲」というものを知っておくことをオススメします。
適正な金額がわかっていて「出せる金額」と「返せる金額」が明確になっていれば、「ここはこだわってお金を使う」「ここは予算を抑える」といった判断が、迷いなくできるようになります。
我慢すべきところと、我慢しなくていいことがはっきりすれば、家づくりはもっと自由で、ワクワクするものに変わります。
「素敵なマイホーム」を建てたい気持ちは理解できますが、その前提として「一生、家計も安心できる家」が人生を豊かにすることも忘れないようにしましょう。
保険や住宅を売ることを目的にせず、有料で相談を受けている住宅購入専門のファイナンシャルプランナー。そのスタイルが支持され、札幌市近郊を中心に累計1,000件以上の住宅コンサルティングをおこなっている。