住宅ローンの事前審査、やっておくべき?

「ハウスメーカーの営業さんから『まず住宅ローンの事前審査をしましょう』って言われたんですけど、言われる通りやった方がいいですか?」

モデルハウス見学に行っていたり、具体的に商談を進められている方から、この質問をされることが多いです。

住宅ローンの『事前審査』とは、簡単に言えば住宅ローンを借りれるかどうかの“仮審査”のようなものです。

家は3,000~4,000万という大きな買い物ですから、現金ではなく住宅ローンを利用して購入する人がほとんどです。

しかし、皆がローンで買っているとはいえ、あなたも同じように数千万円のローンが借りられる保証は何もありませんよね?

「どんな土地にしようかな?」「どんな家にしようかな?」「ローンはいくらまで借りようかな?」なんて考えていたとしても、そもそも住宅ローンを借りることができなければ、すべて”水の泡”。

「私の年収、私の勤め先、私の過去の信用情報的に、いくらまでの住宅ローンが組めますか?」と銀行に審査してもらうのが事前審査です。

さて、この住宅ローンの事前審査ですがハウスメーカーの営業さんの言う通り、やっておくべきなのでしょうか?

結論、やっておくべき

結論、事前審査はやっておくに越したことはありません。

「年収500万円以上」「公務員や上場企業で働いている」この情報だけで判断すると、99%の確率で3,500万円は住宅ローンを借りることができるでしょう。

しかし、過去にキャッシングなどをした際、そのことを忘れて返済が遅れていたり、スマホの端末代金が分割払いになっていて、支払いが遅れた経験があったり、多額のカーローンを組んでいるなど、個別の事情で住宅ローンの審査に通らない可能性もゼロではありません。

万が一、ローンが通らなければマイホームを貯金、または親からお金を借りて買うしかありません。

それだけ現金を持っていなければ、前述の通りで計画がすべて水の泡ですから、しっかりと住宅ローンを借りれるかどうか知っておくためにも事前審査は必要です。

審査しておくと有利

また、あなたが住宅ローンを利用して土地を買おうと思っているなら、なおさら住宅ローンの事前審査は必須です。

土地を買う時にはまず「この土地を買いたいです!」と不動産屋に意思表示をするのですが、その際に不動産屋から「事前審査は既にされていますか?」と聞かれることがあります。

なぜなら、不動産屋もあなたが住宅ローンを借りれる人なのかを気にしているからです。

せっかくあなたに土地を売りますと、他の人へ販売するのを辞めていたのに、あなたが住宅ローンの審査がNGになりキャンセルとなると、不動産屋としてはとても大きな損害になってしまいます。

そのため「事前審査をしてから申込みをして下さい」と申込を拒否される可能性もありますし、「審査済みの人を優先して販売します」とあなたよりも他の人が優先される可能性も出てきます。

事前審査をしていないことで、不利な状況になってしまう可能性があるんですよね。

土地を買おうと思っているなら、事前審査はやっておくに越したことはありませんよ。

意外と手続きが難しい

やっておくに越したことはないのですが、注意してほしいこともあります。

もし自分で銀行に出向いて「事前審査をしたいのですが!」と気合いをいれて伝えても、簡単には審査できない可能性もあります。

これはそれぞれの銀行のスタンス、場合によっては同じ銀行でも支店や担当者次第で審査を簡単にしてくれない窓口もあります。

買う土地や予算、ハウスメーカーがまだ決まっていない状況でも事前審査をしてくれる銀行・支店・担当者もいれば、一方で「しっかり決めてから審査をしてください」と拒否する支店や担当者もいます。

ネットバンクは審査しやすいのですが、北洋、北海道銀行あたりだと提出する書類も色々と必要なので大変かもしれません。

もし自分で事前審査を進めるなら、あなたの大切な時間を無駄に使わないよう、電話で必要書類や必要事項を確認してから行くのがオススメです。

営業マン経由で審査すると…

実は、自分で直接銀行に出向いて事前審査をする人は極めて少数で、ほとんどの場合、ハウスメーカーの営業マンを経由して審査してもらう人が多いです。

私も住宅営業をしていたのでわかりますが「とりあえず客の事前審査をしろ!」と上司や先輩から言われていました。

理由は『3つ』あります。

1つ目は、住宅ローンが借りられないお客様を相手にしても時間が無駄だからです。これはわかりやすいですよね。

2つ目の理由は、次回のアポイントが取りやすいから。事前審査をすることになれば、次回「事前審査をする」アポイントが確実に取れますよね。

人は心理学的に何回も会っている人に対し、心を開き、信頼してしまう傾向があります。何でもいいから、また会う約束を取るのがとても大事だと教えられました。

なので、何かしら理由をつけて会おうとする相手のペースにハマってしまうと、徐々に断りづらい状況になるので注意しましょう。

そして3つ目の理由ですが「あなたの個人情報を取るため」です。

事前審査をするためには、最低でも「運転免許証・健康保険証・源泉徴収票または市民税決定通知」これらが必要です。

つまり、営業マン経由で事前審査をすると「あなたの年収や勤務先がバレる」ということです。これらの情報がバレるとまずいのは、

「このお客さんは年収がこのくらいだから〇〇万円くらいまで借りれそうだな・・・」「それなら土地は〇〇区を紹介して建物の大きさは〇〇坪くらいにしておこう」みたいに、あなたがどうしたらその会社で家を建ててくれる、契約してくれるか足元を見ながら作戦を練られてしまうからです。

要するに相手のペースにハマらないように気をつけるために、個人情報を安易に相手に開示しないようにしましょうということです。相手は百戦錬磨の住宅営業マンですからね、何回もこの手順で契約を勝ち取っているでしょう。

このような感じで住宅ローンの事前審査をすることにはメリットがあるのですが、同時に注意してほしいこともあります。

結論、事前審査はした方がよいのですが「自分で頑張ってやるようにする」「住宅営業マンのペースにハマらない」このことに気をつけてください。

そして「住宅ローンが借りられるかどうかの審査」よりも「住宅ローンを返していけるのかの診断」の方が、さらに重要であることもFPとして付け加えておきますね。

診断がしたい人は、当事務所の「あんしんマイホーム資金計画書サービス」をご利用ください。

新松 尊英
札幌住まいのFP相談窓口代表。札幌で住宅会社の営業マンとして働いた後、中立的な第三者立場から住宅購入の相談ができる仕組みを確立するために独立。

保険や住宅を売ることを目的にせず、有料で相談を受けている住宅購入専門のファイナンシャルプランナー。そのスタイルが支持され、札幌市近郊を中心に累計1,000件以上の住宅コンサルティングをおこなっている。

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